宮古にて

「午前中はイベント会場での仕事、午後は泥出しです」

その日の朝、どきどきしながら宮古のボランティアセンターの受付に出向いた私たち一家に、係のおじさんは告げた。

「イベントって何だろう。何をするのだろう」
とにかく、指定された会場である「グリーンピア田老」にレンタカーで駆けつけると、大勢の人たちが体育館の外で行列していた。

その人たちを掻き分けて中に入ると、市役所の方々が待ち構えていた。どうやら、呉服メーカーが集めて、寄付してくれた浴衣を、避難所や仮設住宅で暮らしている方々に配るイベント。私たちの仕事は、その方々が浴衣を選ぶサポートをする、ということらしい。

そうこうしているうちにどっと人々が入ってきた。二十人ずつくらい、10分交代で、ということで、浴衣選びが始まった。

何しろ自分では浴衣と言えば旅館で着たことがあるくらいで、帯の締め方すら知らないので冷や汗ものだった。息子は人との接触を避けて、ひたすら試着された浴衣を畳む仕事にまい進していた。

ほとんどの浴衣がなくなるまで2時間。
嬉しそうに浴衣を持ちかえる人々の笑顔が何よりだった。

コンビニでおにぎりを頬張り、急いで午後の会場へ。

海岸沿いの駐車場。既に多くの老若男女がスコップと1輪車で作業中。胸のワッペンには「経団連」「横浜国立大学」とか書かれていた。

津波が運んできた泥をスコップで掻きだして土嚢に詰める単純労働だが、炎天下の中、慣れないスコップ使い、重い土嚢運びは思いのほか大変だった。

回りは破壊された家が数軒みえるが、既に生活している家も多く、着実に復興している感じがした。

首に巻いたタオルは絞れば水が出るほど汗びっしょり。2時間半ほど作業して終了となったが、駐車場にはまだまだ泥が残っていて、物足りなさが残る。

盛岡に戻る途中で銭湯に立ち寄り、さっぱりして新幹線に乗り込んだ。

なぜだろう。体は疲れていて腰も痛いのに、不思議な爽快感。

そして、また来なきゃ、という思い。

「人のため」じゃないのだ。自分のためのボランティア、ということに改めて気付いた。

写真上 宮古ボランティアセンター
中 作業した駐車場
下 積みあがった土嚢