こどもホスピスの奇跡 石井光太

「先生、この子治らないのなら家に連れて帰ります」
何度か小児医療の現場に関わったことがある。また、死の臨床研究会の参加等を通じて自分なりに「ホスピス」の在り方を学んできた。ホスピスは終末期医療の文脈では、ほどなくして亡くなる方のための施設と捉えられることが多いが、大阪に誕生した「TSURUMIこどもホスピス」は、難病に侵された子供たちとその家族ができるだけ楽しく、思い切り趣味や勉強に打ち込める施設として誕生した。もちろん、延命治療でなく、最期の日々を家族とともに思い出を作る場としての機能もあり、延命に重点が置かれていたり、半強制的に親が付き添うことが求められたこれまでの小児医療の考え方を変えつつあると言っても良い。子供に対する余命の告知など難しい問題もある。健康な子供たちと異なり、重病の子供たちは勉強できる時間を渇望しており、勉強することは大切な生きがいであり、学ぶ場としての意味も大きい。当事者たちの熱意でできたこのような好例が、もはや「奇跡」と呼ばれることなく、どの地域でも享受できるようになって欲しい。