モスクワの地下鉄

前回のモスクワ滞在は自家用車があったので、公共交通機関に乗ることはほとんどなかった。

今回、溢れる車と、到着後2週間で乗っていた車が事故に巻き込まれたりして、今回は車を持たないで過ごそうと考えている。

で、とにかく地下鉄、トロリーバス。そして徒歩。到着した翌日から地下鉄になじんでしまった。

到着後滞在したホテルから職場までは、地下鉄の駅まで歩いて15分、二つの地下鉄を乗り換えながら1時間かけて通っていた。ホテルは日本人が多く住んでいる市の南西部にあって、家もそのあたりで探そうと思っていた。

途中で気が変わった。

とにかく遠い。日本にいた時は鎌倉から四ッ谷まで1時間40分かけて通っていたからそれに比べると楽なはずだが、やっぱり疲れる。そのあたりに住んでいる日本人は車通勤の人が多いようで、地下鉄で通っている同胞の姿はほとんど見かけなかった。

ロシアの地下鉄は安いが(通勤に1時間近く乗って一回80円ぐらいか)、とにかく車掌がおらず、ドアは勝手に閉まる。それがパタン、とものすごい勢いで閉まる。日本のように駆け込み乗車でうっかり挟まれれば、首がちぎれそうな勢いである。

それに地下鉄はとても深く、乗っているエスカレーターの先が見えないほどだ。今日計ってみたら、ホームから改札口まで、エスカレーターに乗っている時間だけで1分50秒! それでも、日本と同じように、急ぐ人のために左側をあける(何と、これは東京でなく大阪と同じルール。それにしても、途中で疲れてしまってほとんど駆け上がる人を見ないのだが変なルールである)

それに、地下鉄の出口。いくら真冬に開けっ放すと寒いからと言って、ドアがものすごい勢いで閉まるのである。だから先に入った人が必ず後ろの人のためにドアを押さえている。そうでなければ子供なら吹っ飛ばされるだろう。人が通った後はぶらん、ぶらんとすごい勢いで動いており、まるで地獄の入口のようだ。通るタイミングを見計らわないと大けがをしそう。

改札は日本のスイカと同じ、プリペイドの乗車券をかざして入るシステムだが、なかなかうまく反応しない。間違えば日本のようにビニール製のやさしいものでなく、鋼鉄製のカニのはさみのようなおどろおどろしいものに「ガシャン」と行く手を阻まれるか、下手をすれば挟まれて股間に大けがを負う可能性がある。

車内は、携帯電話かけ放題(しかも走行中も電話が途切れない。はじめから地下鉄車内で使えるようになっているらしい)。多くの若者はアイポッドをいじり、ヘッドホーンから大音響をまき散らす。そうかと思えば、オペラ歌手のような美しい声で歌いながら袋を持って乗客から施しを受けるおばさん。結構みなお金をはずんでいる。人目もはばからず座席で熱い抱擁とキスを繰り返すカップル。もう何でもあり、という地下鉄で毎日通うのにだんだん慣れてきた・・・・が、かなり疲れる。

楽しみもある。美術館のような豪華な造りの駅のホーム。私の職場の最寄り駅であるノボスロボツカヤ駅はステンドグラスが美しい。モスクワ地下鉄のホームページから
http://www.metro.ru/stations/koltsevaya/novoslobodskaya/


それから面白い駅の広告。私が気に入っているのは駅員の格好をした絶世のロシア美女とイケメンの若者が担架を運んでいるのだが、担架に乗っているのが地下鉄の車両の模型という、モスクワ市交通局の超大型広告。「私たちは未来を運びます」とか、書いてあると思うが(今度何と書いてあるか、ロシア語を調べてみようと思う)、できればこれは日本に持って帰りたい。

明日もまた地下鉄で出勤だ。