女性の日

3月8日は、国際婦人デーでロシアの祝日。今年は日曜日なので月曜日が振替休日で三連休だ。

その直前のウィークデーの金曜日、職場で女性の日を祝った。

その週は週の初めから準備でみんな浮足立っていた。

男性社員で構成する「婦人デー企画委員会」が発足し、カンパ集め。

前日は、男性社員総出で買出し。

パーティーは金曜日の午後、社員食堂で、と決定。

「勤務時間中じゃないのか」と、秘かにつぶやく私。ところが聞いてみると、社長が、この日の終業時刻は午後4時と決めたそうだ。

そして当日の朝、ロシア語の歌詞がメールで送られ、この歌の練習をするので、男性社員は30分前に集まれ、との企画委員会委員長の指示。

仕事をしていると私の執務室にピンクのドレスと黒いスカートでばっちりドレスアップした女性が入ってきた。

どちらさんですか、言いかけてよく見ると人事課長。

しかめっ面で人事の相談が始まったがどうも勝手が違う。
インターンの学生かと思ったよ」と思わず軽口をたたくと笑って去って行った。なんだか私も雰囲気にあてられて浮ついてきた。


パーティーの開始。男性社員がずらっと社員食堂の前の廊下に並び、ワインの入ったグラスを持って、女性社員を迎える。そしてやってきた女性社員にグラスを渡し、両側のほっぺにキス!

人様の奥さんにキスするなど、する方も受ける方も信じられんヤツラだ、と表面上でニコニコ「コングラチュレーション」と言いながら、心の中では密かに憤る(内心では少しうらやましい気が)

かくしてパーティーが開始され、歌、ダンス、花のプレゼントと盛りだくさんだった。

最近ヨーロッパから着任したばかりのの同僚は、「すごい日ね。ロシア人女性がうらやましいわ。私の国にはこんな日はないわよ。バレンタインデーだけよ。」と言いながら、大いにダンスで盛り上がっていた。

パリ出張から戻ったばかりのオランダ人は、「町中花だらけだな。モスクワでなくアムステルダムに降りたのかと思ったぜ」

ちなみに、「男性の日」は2月23日。私は出張のため不在だったが、女性社員からなる「男性の日企画委員会」が、プロのベリーダンスチームを呼ぶなど、大いに盛り上がったらしい。何とも惜しい!

7時ごろになるとオフィスは空っぽになった。

オフィスの外に出ると、ずらっと花屋の露店。モスクワはまだ一面の雪だから、すべて輸入品だ。これだけの花を買えるロシアの経済力は大したものだ、と思う。

地下鉄車内は、花を持つ人たちであふれていた。花を持った女性は、職場でもらったのだろう。男性は、これから自宅で奥さんや、彼女に渡すのだろう。みんな華やいでいる。


でも・・・・

自宅近くの工事現場では、夜にもかからず、雪の中、キルギスタジキスタンコーカサスからの出稼ぎ労働者たちがヘルメット姿で黙々と働いていた。

お祭り騒ぎとは無縁な人たちもいるのだ。