光のウラジオストック


ウラジオストックは、15年前、私が初めてロシアに踏み入れた場所だ。

前回は新潟から国際線のツポレフ機で1時間半。

今回はモスクワからアエロフロート国内便で9時間。

夕方、雪のモスクワを発って翌朝、ウラジオストック空港に降り立つと、暖かい春の風が吹いていた。

人々の表情も落ち着いているように見える。

街を走っているのは、ほぼ100%、右ハンドルの日本車。クロネコヤマトペリカン便、東京電力、○〇かまぼこ店など、日本時代のペイントそのままの中古車が走っていて、可笑しい。「返せ、北方領土」というペイントをつけたまま走っている車を見かけた、という笑い話も聞いた。

15年前の仕事相手と再会。お互い抱き合って再会を喜び合った。ただ、定年間際の彼の額には深いしわが刻みこまれ、その間の苦労を物語っているようだ。

自分の来訪をこんなに喜んでくれる人がウラジオにいてくれるのだ、と改めて思う。

いろいろな機関を10か所近く駆け足で訪問したが、どこも大歓迎してくれた。お土産は、山のような本とパンフレット。仕事も順調に進んだ。

日本よりも2時間も進んでいて、8時近くまで明るい。

夜、ホテルのロビーでくつろいでいると見知らぬ男が近づいてきて、さっとカードを差し出した。書かれている日本語が目に飛び込んでくる。

「若くて美しい女性と楽しいひととき、あなたのお部屋で」

カードをつき返そうとしたが、あっというまに男の姿は消えていた。

モスクワのホテルでは絶滅したこの手の商売。まだここでは健在なのか。折からの経済危機の影響で、失業者が増え、治安が悪化しているらしい。

仕事が終わって空港に戻る直前、金角湾を見下ろす展望台に連れて行ってもらった。

カップルが楽しそうに行き交って夕方のひと時を楽しんでいる。ロシアで二つしかないケーブルカーの一つが、その赤い車体をのんびり展望台に向かって進んでくる。

このような平和な時間が続いてくれることを祈らずにはいられない。