イスタンブール人間模様1


話は前後するが、3月の3連休にイスタンブールを訪ねた。

私の大好きな歴史モノが沢山見られることを大いに期待していたが、そこで出会ったのは、人なつっこい人たち。息子はあちこちで頭をなでられ、ほっぺたをさわられたり、「リトルサムライ!」と声をかけられる。たいていはそれでおしまいだが、中にはしつこくつきまとうちょっとアヤシげな人たちも。

どこまで信用していいのか、難しい・・・・


「ダメですよ。もう遅すぎます」

歴代オスマントルコ王朝の王宮だったトプカプ宮殿の入口で、初日の夕方、流暢な日本語で声をかけられた。
「親しげに声をかけて来るヤツにはまず注意」とガイドブックに書かれているとおり。当然警戒モード。
ついさっきも、「バザールでござーる」と声をかけてきた男を振り切ったばかり。

「○〇株式会社イスタンブール支店で通訳をしている○〇といいます。今週ここで大きな学会があって、学会発表しに来た我が社の幹部をトプカプ宮殿に連れてきました。」

へえー、さすがノーベル賞受賞者を輩出した会社、幹部が学会出張かい。

「この時間だと王宮に入っても時間が足りませんよ。5時に幹部とは待ち合わせで、少し時間があるので良かったらいろいろ教えてあげます、何か質問はないですか?」

どこか眺めの良いところで休憩したい、と言うと、「貴方のと会えたのも、イチゴイチエ。案内してあげます、行きましょう。(一期一会なんてそんな日本語よく知ってるな、と感動している私たち)」と言って歩き出した。

歩きがてら、「ここのバザールは良いですよ。有名なバザールは高くて偽物、中国製。上げ底(よくそんな日本語知ってるね、と再び感動)ここの店で買って下さいね」「○○は治安が悪いです。睡眠薬泥棒も出ます。十分注意してください」

とあるホテルに案内され、「このホテルの最上階はとても眺めの良いレストランです。でもちょっとボッタくりなので、食事でなく、飲み物だけにしといた方がいいですよ。(そこまで教えてくれるの、とっても、親切頼りになるなあ、と思っている私たち)」

「ここまで来たので、日本語の通じる良い絨毯屋を紹介します。すぐ近くです。日本領事館御用達です。」といって、絨毯屋に連れて行かれた。「やっぱり」と少し警戒したが、そのおじさんはそこで「さよなら」。私たちは別に絨毯には興味がなかったので、店主と日本語で挨拶してすぐに店を退出した。押し売りもなく、ただ、良い人に出会えた、と思った。

その後、スルタン、アフメット一世が17世紀に建立した「ブルーモスク」に入ろうとすると、英語でしつこく話しかけてくる若い男がいた。いちいち返事していると、妻子はいつの間にか姿をくらましている。こういう事態になると彼らはいつも私を1人にして逃げるのだ。

この先こんな人たちに付きまとわれるのかと思うと少々気が滅入る。

モスクでしばし、絨毯の上にすわり、巨大で歴史的な建物の中を眺めながら、イスラムの雰囲気に浸る。やっぱりすごいな。

モスクを出ようとすると、日本人らしい女性と目があった。

かすかに会釈すると、先方も少し遠慮がちに「こんにちは、でいいですか ? 」

(続く)

写真  ブルーモスク
    イスタンブール市遠景