セマーを見る

イスタンブール2日目の夜は、国鉄スィルケジ駅構内で、イスラム神秘主義に属するといわれるメヴィラーナ教団のセマー(旋舞)を見た。もっともこの教団は異端ゆえ、トルコでは宗教行為ではなく、旋舞を観光として解禁していると聞いた。

それは夜7時半。天井高い駅構内の一角にセットされた舞台で、古典音楽の演奏から始まった。音楽と歌謡。郷愁をそそる少し演歌に似た調べで30分くらい続く。

その後、セマーゼンと呼ばれる踊り手の男性5人が現れる。最初は黒い衣をまとっているが、そのうち、上下白い服、下はスカートのような衣になる。一人ずつ中央に歩み出て、くるくる回り始める。最初は両腕を胸の前に十字に組み、次第に手を上げていく。特徴のある長い帽子をかぶり、若干首を傾けて、くるくる、くるくる。次第にスカートが開いて、波打つような美しい円錐形になる。

最初はゆっくりでスカートも閉じ気味であるが、最後の方は曲も早くなり、スカートが扇のように波打つ。踊っているいろいろな年齢層の男たちの顔は、みんな無表情だが、陶酔しているかのようにも見える。こんなにくるくる回り続けて気分が悪くならないのだろうか、と素人っぽい感想がよぎる。おそらく、彼らには座禅のような無我の時間がずっと継続しているのだろう。

くるくるくるくる、駅の一角に白い5つの大きな花が咲き、音楽に合わせて美しく回転し続ける。

永遠に続くかのような、静かな無我の踊り。

旋舞が終わり、セマーゼンが一列に並ぶ。よろけたり、息が上がっている者はだれもいない。見事な規律である。

大きな拍手の中で、彼らは一列になって舞台の袖に消えていった。その間1時間。実に不思議な時間だった。