突然の春

「目が覚めたら、自分が虫になっているのに気づいた」

というのは、有名なカフカの「変身」だが、先週、同じような体験をした。

とにかく、体が硬直してベットから起き上がれない。手を動かす気力もない。全身が脱力状態で、ぼぉーとした頭の中で、この「変身」の一節が頭をよぎった。

昼近くになっても体が泥のようになったまま。

思い切って、最近モスクワにオープンした日本式スパに行ってみることにした。そう思いついただけで、少し元気が出た。

地下鉄とバスを乗りついで、郊外のスパへ。
合掌造りの門をくぐると、和服の着物を着たロシア美人が、「いらっしゃいませ」

案内されるまま、玉砂利をひいたサウナに横になること30分、汗がどっとでるが、眠ってしまいたくなるくらい心地よい。その後、ジャグジーに案内されるが、水流がきつく、それだけで全身マッサージだ。

1時間コースの指圧を頼むと、中国人らしい女性が私を寝台に横たわらせて指圧を開始する。ちゃんと訓練を受けているようで、本当に心地よい。彼女の小さな手がボキボキ鳴るくらい、相当な力。「痛くないですか」と聞かれながら、最後は気持ちよくて眠ってしまった。

スパを出る時にはすっかり元気になっていた。

モスクワも便利になったものだ。

今日のモスクワは朝は1℃だったが、日中は18℃。私の執務室は西日が直撃するため異常に暑く、初めて冷房を入れた。

朝は、カシミアのコート、毛皮の帽子、ヒートテックで出勤、建物の蔭は根雪があったのに、昼は冷房をつける。この変わり様にはついていけない。

また体調がおかしくなり、少し早めに8時半頃帰宅し、息子と風呂に入る。窓の外は美しい夕日。明るいうちに風呂に入れるのも、モスクワならではか。

こちらの生活もそんなに悪くないのかも、と思うが、それにしても激しすぎる気候の変化、何とかならないものか。