何という屈辱感。でも・・・

仕事を終え、地下鉄の駅前のスーパーで買い物。

果物や飲み物、パン、魚・・・
珍しくモヤシがたくさんあったので思わず買いだめしてしまう。

モスクワでは買い物袋は有料なので、最小限にと思い、小さな買い物袋を選んだ。

それが失敗のもと・・・・

レジが終わって詰め込んでみると、品物が袋から溢れかかっている。

地下鉄の改札をくぐり、ホームまでの長い長いエスカレーターに乗る。

ようやくホームに着くという直前、買い物袋の取っ手がちぎれたかと思うと、瞬く間に大きな亀裂が入り、買い物がエスカレーターの階段に散乱した。

あわてて拾い集めようとするが、すぐにエスカレーターは終点に。

周りのロシア人たちが拾うのを手伝ってくれるが、間に合わず、地上に来てしまう。

まずい、ここでうろうろしているとエスカレーターから降りてくる人の道を塞いでしまう。とても危険だ。

エスカレーターの安全を監視している駅員のおばさんが駆け寄ってくる。

エスカレーターの最下端で、波に打ち寄せるような形で上下しているモヤシの袋を人々の足元を縫って拾い上げる。

邪魔にならないようにホームの端の地上に品物を集め、ため息をつく。

パックからはみ出した魚、汚れたリンゴ・・・

誰のせいでもない、いや、袋をケチった自分のせいか。

どうしようもない苛立ちと敗北感、屈辱感・・・

ここは職場の近くの駅、同僚や部下たちに見られたかもしれない。恥ずかしい。職場では偉そうな顔しているのに、あのザマは何だ・・・てな感じかもしれない。

仕方なく全部通勤かばんの中に押し込む。

いったい俺が何をしたって言うのか、もう帰宅前の買い物は二度としない、とブツブツ言いながら・・・・


悄然として自宅に帰ると、妻と息子がニコニコ出迎えてくれた。


「こんなひどい目に会った」と、勢い込んで話していると、だんだん落ち着いてきた。


まあいいか。こんな日もあるさ。


そういえば、あの時周りのロシア人のおばさん、ニイチャン、ネエチャンが親切に私の買い物を拾い集めてくれたが、パニくっていた私はろくにお礼も言わなかったな。

そっちのほうも気になってきた。

みなさん、本当にありがとう!