スェーデン大使館

仕事上のことで、モスクワのスエーデン大使館のレセプションに呼んでいただいた。

モスクワその他でいろいろな大使館にお邪魔したが、モスクワ大学の近くの丘陵地帯にあるこの大使館の前に降りたつと、ゲートから正面玄関に向かう広々とした庭が見えた。

中に入ると執事が迎えてくれ、クロークでコートを預けると、すぐに飲み物が運ばれてきた。

シンプルだが、洗練されたモダンな内装。そこかしこに使われる木製の家具と模様。あかあかと燃える暖炉。聞くと築40年近くというが、これぞ北欧建築の神髄だろう。

今日は、旧ソ連諸国の政府関係者、米国や欧米諸国から来た外交官が多かったが、皆感嘆の声を上げる。

客間の隣には、客に見せるための書斎がある。英語、露語、スエーデン語とさまざまな本があり、客はソファーに腰掛けていろいろな本が読める。デスクがあり、誰かがいままでそこで仕事をしていたかのように、見苦しくない程度に書類や新聞、開いた本が置かれていて、それが一層くつろげる雰囲気にさせる。全く心憎い演出だ。

大使の参加者を歓待するスピーチを聞く。一言の無駄もなく、参加した者を心からくつろいだ気持ちにさせる、ホスピテリティあふれる見事なスピーチだ。後で大使と一対一で話したが、優しい人柄を感じさせる外交官だった。

スエーデンという国はすごいな、と思う。人口は800万人余りだが、ボルボアウディー等、世界に誇る自動車を生み出す技術を持ち、ノーベル賞の授与を通じて、国の権威を高めることも見事に成功している。一方で、この国民は高福祉、高負担という道を選択し、低負担、低福祉という極東のどこかの先進国の対極にある。もちろん、いいことばかりではないが。

大使館にいるだけで、スエーデンという国に対して敬意と、行ってみたいという興味を思い起こさせる。すごいことである。一緒に行った日本人同僚は、無性に北欧家具の店であるイケアに行きたくなった、と言っていた。


翻って日本の大使館はどうか。各地の日本大使館について、よく知っているわけではないが、日本に対して尊敬と興味を感じさせるような造りになっているかは大いに疑問だ。もちろん、豪華に金をかければいい、という問題ではないが、センスのない大使館は、日本という国自体に悪印象を持たれてしまうのは事実だろう。接遇する日本人外交官の努力だけでは限界があるのではないか。

無駄遣い削減は大いに推奨されるべきだが、外交官へのやっかみが過ぎて、外交の意味を損なわないようにしなければ、と思う。