今日は誕生日

ロシアでは、誕生日を迎えた本人が、ケーキや飲み物を用意し、「今日は私の誕生日だから祝ってね」と同僚たちを招待するのが普通。

日本のように、「誰も祝ってくれない・・・」と1人でいじける必要はないので、それなりに良い習慣と思っている。

私の生まれ育った大阪の実家は、家族の誕生日を誰も憶えていないという、実にマイペースな家だった。夜の10時を過ぎて、「今日は何の日だと思う」とたまりかねて本人が言いだしてみんなハッと気づく、そんな家だったのだ(誕生日が重要な家族行事だったという妻からすると、信じられないらしい)。

ただ、シャイな日本人としては、自分で用意して自分で祝ってくれ、と迫るのも厚かましい気がして、今年も何も自分で用意せず、大人しくしていた。

幸い、私のセクレタリー役もやってくれている総務のサーシャが出張中で、今日は逃げられるかもしれない。

ところが、午後になって、「今日夕方5時に談話室に来てくださいね」とのメールが舞い込む。やっぱり、来てしまった。

こうなったら手ぶらで行けないので、あわてて車で外出中の妻に電話して、「ビアードパパ・モスクワ店」に寄ってもらい、シュークリームを買ってきてもらった。

パーティーが始まる。シャンペンが抜かれ、乾杯。

日本語ができるロシア人同僚から「あなたのお陰でとっても仕事がやりやすくなりました。また、いろいろ新しい仕事もできるようになったので本当に楽しいです。」とスピーチがあった。彼女、それをロシア語に訳して周りの同僚に聞かせる。

思わずジーンと来てしまった。

プレゼントです、と言ってしゃれた雪靴。拍手。さっそく履いて見せる。

こうして祝ってくれる同僚に囲まれて本当に有難いことだと思う。もちろん、仕事上では厳しいことも言ったり対立したりするが、上下関係抜きでお互いファーストネームで呼び合っているせいか、日本にいるときほど痕をひかず、みんなカラッとしている。

ロシア極東に5回も行ったことがあるのは、この中では私だけだろう、と自慢。そして、私が若いころ、ロシアの海洋調査船に乗船してロシア人はじめ各国の研究者たちと1カ月の海洋調査に出た思い出を語ると、みんな興味深そうに聞いていた。
そうか、この話したことなかったな、意外とまだまだコミュニケーションが浅いんだな、と反省。


家に帰ると、妻がケーキを焼いて待っていた。息子にも祝ってもらう。

大阪の実家からはやっぱり連絡なし。いつものとおり忘れているのだろう。

突然語呂合わせを思いつき、家族の前で、「今年は獅子(44)の年にするぞ」と宣言した。「それどういう意味?」と突っ込まれて思わず言い淀む。

考えてみれば、獅子になるほどの体力気力は残っていないかも(泣)

今日の日は二度と巡ってこない、毎日が一生と思って、とアタマでは分かってはいるのだけれど・・・