サルキスの夢を語りながら・・・アフタラ修道院





ハフパット修道院を出て1時間余り。いつしか眠ってしまったらしい。

運転手に言われてはっと気がつくと、目の前に大きな修道院が要塞のような趣で建っていた。

ここがアフタラ。

ギリシャ正教修道院で13世紀までに建造された。そして中は絢爛豪華な14世紀のフレスコ画。なるほど、ここは正教の国であるグルジアの国境にもほど近い。他のアルメニア教会とはかなり趣が違う。

例によってここもかなりの高地で断崖絶壁の上に建つ。本当に山の上の教会が多いのは、平地の少なさとしう地理的な問題のほかに、異教徒の侵入という問題に悩まされ続けたせいだろう。

広大な庭を歩きながら、ガイドは、アフタラとは関係ないけど、と言いながらアルメニアのバレンタインデーの話をしてくれた。

聖サルキスの日がいわゆるバレンタインデーで、今年は二月七日だったという(毎年変わるらしい)

この日の夜、未婚の女性は玄関先に小麦粉を盛っておくそうだ。

サルキスは馬に乗って現れる。

サルキスが訪れた娘の家の小麦粉には、馬の蹄の跡が残っていて、そうすると娘はその年に結婚する、という予言だそうだ。

「私もね、毎年盛っているのよ。そろそろ玄関先は恥ずかしいから最近は窓先にね。そしたら今年は蹄の跡があったのよ。多分スズメが遊びに来たのでしょうが」

そう言いながらガイド嬢は屈託なく笑った。

気がつくと雨が止んで、日が射してきた。

写真上 絶壁の上に建つアフタラ修道院
中 近景
下 内部のフレスコ画