コンクにて
サンティアゴ・デ・コンポステーラに到る巡礼路、「ルピュイの道」の途上にあり、サン・フォア教会をいただく山間の巡礼の村、コンク。
それにしても、11世紀建造の、この教会は美しい。
この教会の見どころは正面のタンパン。千年近く経ているがほとんど劣化しておらず、当時のままのユニークな姿が見られる。
この教会は夜11時近くまで開いている。
側廊上部のトリビューンに上がる階段があり、何やらフランス語で21:30と書かれていた。21時30分まで開いているのか、それにしてもロープが張られていて登れそうもない、変だな、と思っていたら、21時30分にトリビューンに登るツアーがある、という意味だった。私がはた、と思い立って駆け付けた時にはもう終わっていた。
悔しい。この村に泊まった者だけの特権だったのに。
それでもライトアップされた教会の光に照らされて、村の細い坂道を登ったり降りたりしていると、どこから見てもこの教会が絵になることに気づく。
途中、真っ白い服に身を包んだ神父さんとすれ違う。
「ボンソワール」
と言葉を交わす。
ささやくような、それでいて、包み込むような柔らかな声。
旅籠に泊まり、早朝起きだして辺りを散歩する。
教会脇の墓地を歩く。河に向かっての絶壁の上にある。
真夜中に繰り広げられていたであろう、死者たちの饗宴の終わりを告げる、力強い教会の鐘の音が、墓地に鳴り響く。
朝7時半。巡礼姿の人たちが次々と教会脇のチャペルに集まってきた。さっきの鐘の音は、ミサの開始を告げるものだったらしい。
しばらくすると、チャペルの中から美しい歌声が響いてきた。
川床からうっすらと朝霧が立ち上ってきた。まるでこの小さな村を包み込むように。
霧に包まれた斜面で、何頭かのロバが草を食んでいた。