土砂降りのルルドにて

ロカマドールから、ともに「フランスの美しい村」に指定されているルプレサック、サンシル・ラポピーを回り、美しい景色を堪能し、高速道路をひたすら南下した。

ところが、トゥールーズを抜けてルルドの近くまで来ると、土砂降りの雨。時々ヒョウまで交る最悪の天気となった。

道路わきに車を停めて、豪雨がおさまるまでしばし休息する。

それでも、何とか日没までに、ルルドに入り、今夜の宿の旅籠に転がり込むことができた。

なぜカトリック信者でもないのにルルドなのか。

比叡山高野山のような、宗教の聖地の雰囲気を味わいたいという気持ちと、日本で病んでいる父の平癒のため、奇跡を起こすと言われているルルドの泉の水を汲んで父に送ってあげたい、という気持ちもあった。

もちろん、奇跡なんてそんな簡単に起こるわけはない、ただ、気持ちが父に伝わればよかった。

そして、ルルドに入った私は・・・

少しがっかりした。

街の雰囲気が聖地のイメージとかなりかけ離れていたからである。

川沿いに所狭しと立ち並ぶ高層ホテル、「バー」「レストラン」ときらきら光るネオンサインに、ずらっと立ち並ぶみやげ物店。店先にはマリアの人形がずらり。

昔泊まったことのある、岐阜の下呂温泉を思い出した。

それでも気を取り直し、夜九時からの蝋燭の行進に参加しようと、聖域のロザリオ聖堂に急いだ。

蝋燭を買い求め、聖堂の前に並んだ。神学校の生徒らしい学生に火を灯してもらう。

しかし、なんという土砂降りの雨、そして強風。傘さえ飛ばされそうになり、蝋燭の火はすぐ消えた。豪雨にミサの声もかき消されがちで、ぼやぼやしているうちに、周りの蝋燭を持って集っていた人たちはどこかに散っていき、1人取り残されてしまった。

消えた人たちはマリアを先頭とする行列に加わって聖域を一巡していたことに後で気づいた。

終わった後、おみやげ商店街を歩いて驚いた。多くの店が、行進に参加した信者たちのために店を開けて待っていたのだ。まるで昼間のような明るさ。

フランスで、こんな商売っ気満々で遅くまで開いている商店街は初めてだ。

旅籠に帰る途中、コーヒーショップに飛び込んで一息。

ルルド最初の夜はこうして訳が分からないうちに終わってしまった。