オロロン・サンマリー

ルルド2日目、午前中に水を汲んだり博物館に行ったりした私は、午後、ルルド近郊に出かけることにした。

どこがいいか、と思って思いついたのがポー。

車を宿において列車に乗り、ポーへ。

ポー駅に着き、さあ街に出よう、と思ったとき、ホームの片隅に古ぼけたディーゼルカーが停まっていた。

慌てて駅で調べてみると、ピレネーのふもと、これも巡礼地のオロロン・サンマリー行きの列車だった。

こうなると、学生時代鉄道ファン(乗り鉄)だった血が騒ぎ出す。

気が付くとピレネーの麓をコトコト走っていく列車の片隅に身を置いていた。エンジン音が快い。

一時間弱でオロロン・サンマリー到着。

ここから、ピレネー山脈を越えて、スペイン領まで走るローカル線が出ているが、今日それに乗ってしまうとルルドに戻れない。

泣く泣く諦め、街に出る。

まず観光案内所に行いて、見どころを聞くと、サンマリー教会を勧められた。

ピレネーの麓の巡礼地きいて、鄙びた田舎を想像していたのだが大違い。沢山の車が行きかう都会だ。

それでも、ロマネスクの彫刻に飾られたサントマリー教会に入ると、いつものように別世界。でもこの教会はなぜかものすごく薄暗い。

同じ列車で到着した何人かの観光客が出て行ってしまうと、シーンと静まり返った広い教会に私1人。

教会内の聖像、彫刻を穴が開くほど見つめて、鑑賞。巡礼路様式になっている薄暗い教会の中を歩いて行くと、ちょうど私と同じ背丈のマリア像が、通路に立っていた。

このマリアさまは何故か天井を睨んでいて、全然穏やかな表情ではない。何かに挑んでいるような顔、あるいはいたずらっ子のような顔だ。

そうなると、悪い癖で、つい話しかけたくなってしまう。

もちろん、言葉に出したりしないのだが。


外に出ると、雨がやんでいた。小一時間も教会の中にいたことになる。

そろそろ駅に戻らないと、夜のルルドでの蝋燭の行進に間に合わない。

またディーゼルカーに乗り、ポーまで戻り、少しポーの街を散歩して、ルルドに戻ってきた。

オロロン・サンマリーの駅で列車を待っている間、ポーと反対側に延びていく線路を眺めていた。

この先にピレネー、スペイン、そして、サンティアゴ・コンポステーラがある。

いつになるかわからないが、今度こそ、この先に一歩踏み出してみよう。


上 オロロンサンマリー行きの列車
中 サンマリー教会のタンパン
下 天井をみつめるマリア像