つながり

先週末、仕事で、といっても一聴衆として参加したシンポジウム。

シンポジストの1人として、宇宙飛行士の毛利衛さんが参加しておられた。

シンポジウムの最初は毛利さんの短い基調講演。これまで何回も毛利さんの講演は聞いたのだけれど、今回は特に印象に残った。

まず最初に、スペースシャトルからの見た地球一周映像の早回し。夜が明けて、広々した青い地球が足元に広がる。まだ夜が明けていない地域の上空には、美しいオーロラが。

「見てください。大気圏とその上との境がうっすらと膜のようになっているのがわかりますか。その上は暗黒の世界です」

「地表からこの膜の上まで、たかだか100キロくらいのこの薄い膜の間 に、我々の生命が守られて存在しています」

「地球に生命が生まれたのは40億年ほど前と言われています。生命の元となる物質は地球外から来たとも言われていますが、解明されていません。わかっているのはこの100キロくらいの薄い膜が、地球上に生命が誕生して40億年の間、命を育んできたということです」

「最初の生命体の発生から40億年。母なる生命から今日に至る40億年の間、DNAは、数え切れないほどの先祖たる生命体を乗り継いで、いろいろな生物に分化しながら今日まで伝わってきました。DNAにとって生命ある個体はDNAを後世に伝える乗り物です。」

「つまり、すべてはつながっています。最初の生命体からあなたへのつながり、そして、それは、あなたが地球上のすべての生き物とつながっている、ということです」

余計な私の思い入れまで入ったメモかもしれないが、ざっとそんなお話で、毛利さんの一言一言が、心に染みわたる気がした。

自分が今、抱えているDNAは、40億年前から連綿と受け継がれたもので、そして、私の体を通過して、これから先はるか未来の人間へとバトンのように回されていく。その意味で、私の今の体は、DNAにとっては次の世代へ乗り換えるまでの当座の乗り物にすぎないのかもしれない。

悲観することはない。生き物としての自分としては、それが事実なのだし、だからと言って今の生の意味が薄れることもない。バトンを継げるかどうか、というのも結果論にすぎない。

それにしても、すべての生き物がつながっている、というのは仏教の思想に近いと思うが、同じことを先端科学者の毛利さんの口から聞くとは思わなかった。

話は若干違うが、去年読んだ宇宙物理学の本には、「最新の宇宙物理学の研究の成果は、宇宙は無から生まれて、やがて無に帰っていく、ということです。それは、般若心経の説く、”色即是空””空即是色”ということかもしれません」とあったなあ。

宇宙から見た人間論、そして最新宇宙論は本当に面白い。