石見銀山の懐に抱かれたまち

早朝5時半に起きて、温泉津の公衆浴場「元湯」に入る。何と、新古今和歌集に出でくる温泉なので、千年以上の歴史がある。湯治場の雰囲気満点。ただ湯はすごく熱かったが・・・

見送ってくれた若女将に別れを告げて石見銀山を目指す。仁万の駐車場から無料のシャトルバスで銀山へ。大森代官所跡で自転車を借り、銀山の懐に抱かれた町、大森町を走る。新緑の風が心地よく、また、街道の両側の古民家が並んだ風景も懐かしく、心癒される。

それにしてもなんてツバメの多い町なのだろう。あっちこっちに巣があり、スズメのように、路上をびょんぴょんとツバメが跳ねている。まさに燕尾服を着て鳥が歩いているようで、ほほえましい。

古民家カフェに入り、庭を眺めていると、遠い昔、自分がこんな家に住んでいたような気持ちになる。そんなはずはないのだが。そして、一度で、こんな古民家で一か月とか、一年とか、本を読んだり、モノを書いたりしながら、時計の要らない生活をしてみたいと夢想する。

ところで、こんな鄙びた地ではあるが、ここに義肢製作に関して世界的に活躍している会社がある。「中村ブレイス」がそれ。病気や事故で手足や指、乳房等を喪った方たちが全国から訪ねてくる。そして、地雷や戦争で手足を失ったアフガニスタンなど紛争地の人たちの協力も積極的に行っていて、戦争で足を喪ったアフガニスタンの少女が日本で義足を作り、アフガンに帰っていく映画「アイラブピース」のモデルになり、ロケ地にもなった会社である。

世界的な仕事は大都市でなくてもできる、という見本のような例だと思う。


写真上 古民家の庭。こんな風景を毎日見ていたいと思う
中   大森町はずれ。つつじの花が風に揺られている
下   大森町