5分間のドラマ
今朝、いつものように大学の中で、構内で運行されているミニバスを待っていた。
ふと足元の道路をみると、朝露で濡れる道路を、あろうことか10センチほどのミミズが
道路の中央に向かって進みだしていた。
幅5メートルはある道路。
ひっきりなしに通る自転車と車。
このまま向こうまで無事に渡れる可能性は皆無だ。
方向を向け変えてやろうか、あるいは、向こうの草むらに放り投げてやろうか、と考えていたが、ひっきりなしに通る人の目が気になって、何もできずにいた。
自転車が何台もミミズの近くを通り過ぎ、そのたびに冷や冷やした。
「ミミズに注意」という看板があったら持って立っててあげたいくらいだった。
何台もの自転車をかわして進んでいくミミズを目で追いながら、何となく「ミミズ、頑張れ」と声援を送っている自分に気づいた。
と、気が付くと、停留所にいる私を見つけたミニバスが指示器を点滅させて近寄ってきた。
「ヤバいぞ」
そう思った瞬間、バスはあっけなくミミズを踏み潰し、私の前に停まった。
おなじみのバスの運転士に会釈しながら、何食わぬ顔をして車上の人となった私。
座席に体を沈めてため息をつく。
「結局オレかよ」