Mission
「しごと」とはなんだろうか。
生活の糧を得るため。自己実現のため。或いは人生を楽しむための資金を得るため。
どれも正しいと思う。
一生の仕事を求めて、転職を繰り返す人も多い。
そのような人は「青い鳥症候群」と言われて批判されてもいるが、
自分が人生で最も多くの時間を注ぎ込むのは仕事だろうし、人は
仕事を通じて何かを遺そうとするものではないかと思う。
自分にとって、しごととはなんだろうか。
このことを考えるとき、三年ほど前にアフガニスタン支援の講演会に出席した時に、アフガニスタンの教育支援を現地で担当していた国際機関の関係者から聞いた次のような話を思い出す。
タリバン政権になってアフガニスタンでは女子教育が禁止され、女子学校は閉鎖され、教員は解雇された。
それでも、女性たちの教育のため、一部の女性教員たちは、こっそりと自宅に生徒を迎え、教育を続けていた。
街には宗教警察が目を光らせていて、彼らに見つかると捕まって罰が科される可能性があったという。それでも、彼女達は教育をやめなかった。もちろん、無償の行為である。
タリバンがいなくなって、女子教育がまだできるようになった。その国際機関の彼は、街にでてきた彼女達の1人にたずねた。「あなたはどうしてそんな危険を冒してまで、教育を授けようとしたのですか?」と。
彼女はきっぱりと、「私は教師ですから」と答えたという。
これを聞いた彼は、仕事、というのは、それで給料をもらっているかどうかではないのだ、ということに気がついたという。同時に、そんな仕事を持っている人は、たとえどのような状況にあっても幸せであると。
私はこの話を聞いて、「Mission」という英語を思い出した。「使命」ということだ。
私の好きなV.E.フランクルは、「夜と霧」のなかで、「自分がこれからの人生に何を期待できるか、ということではなく、自分は、自分の人生からどう振舞う事を期待されているのかを考えること」が大切であると言った。
おそらく、「使命」は一つではないかもしれない。日々の暮らしを支える職業とは別であっても良い。
このことはこれからずっと考え続けたい事である。