車中にて
1等寝台はほぼ満席。この車両は2人の女性車掌が12時間交代で勤務している。非番の車掌は車掌室の隣の寝台で仮眠をとっているらしい。
窓の外は広大な原野、そして、山、川。
日本からの文庫本2冊はあっと言う間に読んでしまう。
ビクトルは日産車に乗っているとのことで、日本びいき。車の話題で盛り上がる。日産のスカイラインは、若者に人気だ、と言うと、ロシアもそうだ、と握手を求めてきた。
31歳で溶接技術者。アムール川下流のコムスモーリスク・ナ・アムーレ市に住み、妻と二人の娘がいる。写真も見せてもらった。
仕事があればロシアじゅうどこでも行く、とのことで、前の仕事はサハリンでの石油関係のプラント。今度の仕事もいつまでか分からない、とのことだった。スキンヘッドなので驚いたが、何のことはない、子煩悩なニイチャンだ。
英語のyouは、ロシア語では、「君」にあたる「トゥイ」と「貴方」の「ブィ」があり、使い分ける必要がある。ビクトルから「トゥイ」と呼ばれていることがわかったので、私もそうすることにした。
途中の駅では、まわりのおばさん達がホームに乗客たちにピロシキやじゃがいもを売っている。私は、ゼンマイの炒め物とゆで卵を買って食べたが、とっても美味だった。
停車時間中は、自室に鍵を掛けてホームに出かけ、発車すると車掌に開けてもらう。寝ている間は中から鍵を開ける。
セキュリティーとしては全く問題ない旅だった。
陽がとっぷり暮れた後も、シベリヤク号はひたすら西に向かって進んでいく。
写真上 物売りの人たちでにぎわうホーム
中 夕暮れ
下 発車を待つ車掌