不思議な展覧会「つながる心」

会社の先輩だったSさんが、亡くなる直前まで執念を燃やしていた、奥さま美奈子さんの遺作展に行ってきた。

パステルで画かれた絵の数々、楽しげな動物。

特に、この「ハピネス」という絵が気にいったので聞いてみると、
http://blogs.yahoo.co.jp/soel917/folder/712890.html

これが彼女の生涯最後の作品とのことだった。

そんなことを全く感じさせない澄み切った明るさ。画面をはみ出す様にして描かれている楽しげな動物の姿。

不思議だな、と思うのは、全くのファンタジーなのに、本当にこんな世界があるんじゃないか、と思うくらいリアリティーがある。

ギャラリーで世話していた友人の方にそう言うと、

「よく言われます。きっと彼女は本当にこの世界に行って描いてるんだね、って」

通りすがりでこのギャラリーをのぞいてみて、涙を流して立ちつくす人もいると言う。

その位、引きつけるものがあるのだ。


ところで。

ギャラリーの入り口には、美奈子さんの写真とともに、主催者である亡き夫、先輩の横顔の写真が掲げてあった。

どんなにか、この場所に自分が立って来客を迎えたかったのだろうか、と思うと本当に残念でならない。

10年の闘病生活の末の写真。一緒に仕事をしたころの陽気な先輩とは全く違う、凄味があった。

「親しい方に自分の遺影を撮ってくれ、と頼んで、病院を一時的に抜け出してわざわざ帰宅し、スーツに着替えて撮影したらしいですよ」

友人の方が教えてくれた。

だからなのだ。写真に溢れるこの凄味は。

決然としてカメラの前に立った先輩の心情を想像すると、先輩を襲った運命の過酷さに暗澹となるとともに、でもすごいなあ、と思う。