序の舞

先週金曜日の夜、仕事を早めに切り上げ、タクシーで夜間開館中の東京近代美術館に駆けつけた。

上村梅園展。

実は、美術好きの私は西洋画派で、日本画はあまり見ないのだが、何故か、この展覧会は、見たいな、と思い続けてきた。

京都の女流画家として、明治、大正、昭和を生きた。最近では、宮尾登美子の小説、「序の舞」のモデルで映画にもなった。

美人画」だから? ではないと思う。「序の舞」を読んだこともないし、映画も見たことがない。

が、前評判が高く見たかった「焔」は、26日に展示替えされて見られなかった。嫉妬に狂い、自分すら持て余す情念をすさまじい迫力で描き切った作、とされる。


でも、やはりすごい。単なる美人画ではない、日本女性の凛とした美しさ。
女流ならでは、男目線の「理想の美」とは全く違う美しさである。


展示の最後の方に、目玉の「序の舞」があった。

大きな絵なので、「あっあれが序の舞だ」と遠くからでもわかった。

そして、行列に並びながら、ドキドキしながら、その絵の前に立つのを待っていた。

そして、しばし、見とれてしまった。

何という気迫と意志。背景が全く書かれていない絵の中で、1人の女性が扇を持って舞っている。

動から静に、静から動へ。まくれ上がった右の袖口は激しい動の名残、そして、今は圧倒されるような「静」の緊張と気迫が満ちている。

それにしても、やはり絵は「実物」を見るに限ると思う。写真では実物の素晴らしさの何分の一も表現できないから。