ゴルトベルク変奏曲
何気なく聞き流していた音楽が、突然胸に響く、という体験は初めてだった。
入浴しながらクラッシックを聞き、かつ好きな本を読む、というのが最近の私のリフレッシュ。この30分のために生きていると言っても良い毎日になってきた。
終電帰りが続く最近の日々ではどうしても電車は睡眠時間になってしまい、好きな読書もなかなかできない。
そんなある日、バッハを聞きながら、中世ヨーロッパの王室の悲劇を扱った歴史書を読んでいた。
あまりに本の内容が面白かったのでつい夢中になりすぎ、その後、疲れたのか一瞬、記憶が飛んだ。多分、睡魔が襲ったのだろう。
突然、音楽と本の中の世界が交錯し、訳が分からなくなって慌てて眼を覚ました。
我に返った私の耳元で響いていたのが、バッハのゴルトベルク変奏曲アリア。一瞬のタイムトラベルだった。
今まで聞き流していて、何とも感じなかったのに、よく聞いてみると、奇跡のような曲だということに気がついた。 すごく高い精神性を感じる。
雨上がりの、すっきり晴れた早春の朝を連想させる前奏。
やわらかな朝の光の中で朝露がきらめいているようだ。
途中で何回か盛り上がり、途切れそうで途切れないところが、覚めそうで覚めない、良い夢を見ているような気分になる。
というか、変なこと言うなあ、と言われるのを承知で書くと、曲の終わり方が良い余韻でいっぱいで、幸せな臨終の瞬間、というのはこういうことなのか、とまで思ってしまう。
それからというもの、深夜帰宅してからYoutubeであちこちの演奏家の曲を聴き比べる日々。もう止められない。
このグレン・グールドのピアノ演奏が最高だと思う。
http://www.youtube.com/watch?v=Gv94m_S3QDo&feature=related
今日ももう一度これを聞いて寝ることにしよう。