「困っているひと」大野更紗著 を読む

開発研究とビルマ難民支援に夢中、単独で国境を越えてビルマに入り、難民キャンプで生活、といったハードな生活にもびくともしなかった女子大学院生に突然訪れた、筋膜炎脂肪織炎症候群という難病。

病名が特定されるまでの壮絶な検査、その後の長期の入院、強引な退院、(そして恋も)といった困難な日々がユーモラスに描かれているが、単なる闘病記ではない。

世の中に困っている人はあまたいるが、自分も「エクストリーム困っている人」として、日一日生きて行くことがこんなに大変なのだ、でも、絶望はしない、大丈夫なんだよ、という力強いメッセージでもある。

ただ、読者は読み進むにつれて、このニッポンがこのような難病患者にいかに冷淡であるか、居住する自治体の財政力に大きく左右される福祉の内容、病院を一歩も出られない患者に立ちはだかる「お役所」の壁等々、わが日本社会の現実に愕然とするだろう。そして、自分が常に、そのような立場になるかもしれない危機にさらされている、ということにも。

それにしても、ステロイド多用で体の一部が壊死して流出し、体に大きな洞窟ができた、などといった一大事。20代の女性にとってはその心中察するに余りあると思うのだが、「難病女子は有袋類女子になった」とさらっと言ってのける著者はすごい。

この先の活躍を心から期待したいと思うし、このような世の中を変えていくことについても、何ができるか考えなければならないだろう。