自分の命は自分で守る

大震災発生時に学校にいた子供たちが1人も津波で命を落とさなかった「釜石の奇跡」の実現の立役者である群馬大学の片田敏孝教授の講演会に参加した。

津波14メートル」の衝撃の予測が発表がされたばかりの鎌倉で、集まった多くの市民が、1時間半の予定を大幅に超えた約2時間半の熱のこもった講演に耳を傾けた。

「自分の命は自分で守る」防災教育のすばらしさを実感した。

1 想定を信じるな
 今回の津波は、想定を大きく超えるものだったため、決められた避難所に逃げた方々が津波に飲まれ、「ハザードマップではうちには津波が来ないはずだから大丈夫」と思い逃げなかった方の多くが犠牲になった。

2 正常化のバイアス
 人間は、大災害の可能性に直面しても、「大丈夫だろう」「自分が大津波に遭うはずがない」と思いこんでしまう動物である、ということ。実際、過去に津波警報が出た時も逃げなかったが大丈夫だった、という「成功体験」が後押ししている。先生は、「逃げなくても良かったなあ」ということが10回あっても、11回目が「逃げとけばよかった」と思った時にはもう遅い、と警告している。そう、人間は「逃げない動物」なのだ。

3 自分の命は自分で守る
 今回、防災教育を受けた中学生たちが自己判断で避難を始め、校舎3階に逃げようとしていた小学生たちを連れ出して一緒に逃げ(結果的にこの時子どもたちが3階に避難していたら全員助からなかっただろう、と言われる)、保育所の子どもたちをおんぶして高台に逃げ、最後は追いついた津波に足を取られながらも逃げ切り、全員が命をつないだ。この時の経過を追う先生の説明は、ハラハラしながらも聞いていた感動した。教育の力はすごいと思う。

4「津波てんでんこ」
 「津波てんでんこ」とは、「自分の命を助けるためには、家族をほったらかしても自分だけ逃げる」という厳しい思想と思っていたが、「家族もきっと自分で逃げているはず。無事で家族に会うために自分も逃げる」という、家族の信頼関係があってこそのコミュニケーションであることを教えられた。そう「父も母も、おじいちゃんも自分の命は自分で守っているはず。だからボクも逃げよう」という考え方が、全員を救う。
 とは言っても、先生も認めていたが、要介護者とか動けない人をどうするか、は本当に厳しい課題。