新潮社の月刊書評誌「波」
本好きの私は各出版社のいわゆる書評誌には一通り目を通すが、最近は新潮社「波」が一押し。特に連載物が出色だ。
蓮池薫さんが北朝鮮の招待所暮らしの日常を綴った「拉致と決断」。
「浮気遺伝子」の存在やテレパシーの可能性など、最新脳科学が下ネタとともに楽しく語られる中村うさぎ×池谷裕二対談シリーズ「大人のための脳科学」、など。
私が最も感銘深く読んだのが、妻で歌人の河野裕子が、癌で亡くなるまでの闘病記録を夫の永田和宏教授が語った「河野裕子と私」。今月で連載が終わってしまったのが残念。
単に、愛情にあふれる家族愛だけではない、嫉妬や猜疑心の裏返しに、「怒り」という形で示される河野の感情の爆発と、それを受け止め続けた教授の心情が赤裸々につづられている。ついに堪忍袋の緒が切れて、椅子を振りあげた教授。しかし・・・・。
愛情の形は何と難しいのだろう。
ここに記された河野の辞世の歌を読んだとき、その愛の深さに、電車の中なのに声をあげそうになって困った。
「波」。たっぷり楽しんで毎号百円とはコストパフォーマンス良すぎと思う。