即身仏の寺院

さて、いよいよウランウデに到着、ビィクトルと固い握手をしていると、車掌のターニャが「ウランウデよ。下車の準備はいいわね。」と部屋を訪ねてきた。ちゃんと彼女、私の下車駅をチェックしていたのだ。

彼女にも別れを告げ、下車。
この列車、私がウランウデの旅を終え、モスクワに戻っても、まだ走っている計算。ターニャの仕事もまだまだ終わりそうにない。

ホームで現地旅行社のスベータさんに会い、車でホテルに向かう。
ホテルで日本語通訳のマリーナさんに合流、いよいよ観光に出発である。2人とも、ブリヤート人、つまり容姿は日本人とそっくりで、特にマリーナさんは地元国立大学で日本文学を講じている方だけあって、日本人以上に洗練された日本語を話す。(「そういえばあれですよね、」とゆっくり考え込むように話すのがマリーナさんの口癖だった。全くディープな日本語の世界)

ウランウデはブリヤート共和国の首都。シベリア鉄道はモンゴル経由、北京に伸びる鉄道が分かれている。

「ウラン」は、モンゴルのウランバートルと同じ、「赤い」という意味で、「赤いウデ川」が由来という。

まず、ダッツアン寺院。ここはチベット仏教のお寺。
お賽銭を上げ、一回回すとお経を一回読んだことになるというマニ車をくるくる回しながら境内を回る。

ブリヤート人は敬虔な仏教徒が多いとかで、マリーナさんもその1人。私がいろいろな仏像の前をすいすい素通りして振り向くと、彼女は、一体一体の仏像の前でいちいち手を合せ、拝んでいる。

ここは、即身仏がおわすお寺。70年前に座ったまま活仏になった僧のミイラが収められているお堂があり、写真が掲示してあった。

悩める人に相談に乗ってくれるお坊さんもおられるようで、「何か悩みがありますか。転勤とか、結婚とか」とマリーナさんに聞かれたので、「自分の20年後の姿が知りたいです」と言うと笑って、「それは占星術師の仕事ですね」と言われた。

ここはチベット仏教の系譜のお寺で、ダライラマ3世も何回か訪問したらしく、写真があちこちに掲示してあった。

境内では何頭かの牛がのんびり草を食んでいる。

何かここはロシアではないような気がしてきた。

郊外の見晴らしの良い丘に車で登る。

遥かかなたまでの平原となだらかな山、そして遠く流れる川のコントラストが美しい。プチ山水画の世界だ。