「魚附林の地球環境学」(白岩孝行著)

オホーツク海親潮海域がなぜ、世界有数の豊かな海なのか。著者はその答をアムール川に求め、アムールが運ぶ「溶存鉄」が理由であることを突き止めた。日露中モンゴルの100人の研究者が参加、体制の違いも乗り越えて研究を結実させたが、この富める海の将来に大きな不安があることも知る。研究者としてそのメカニズムを解明しただけで満足して良いのか。その先は、沿岸国、流域国の国際的に協調して法的、政治的、社会学的なアプローチで問題の解決が必要だが、どうするか。さらに、大学研究は中立性にとらわれることなく、もっと政策に影響を与えるシンクタンクであるべきではないのか等の課題が語られる。オホーツクの環境だけでなく、文理融合の在り方、国際共同研究のありかた、さらには、国際社会に具体的に影響を与える大学研究のアプローチを考える好著。
http://www.chikyu.ac.jp/AMORE/