鎌倉の夕暮れ

鎌倉の自室で読書に没頭して、ふと気がつくと、すばらしい夕焼けだった。新緑の時期の山のみずみずしい美しさ、ひぐらしが涼しげに啼く夏の朝、紅葉の時期の午後など、季節それぞれに鎌倉は素晴らしいが初冬の今は夕暮れ時がひときわ美しい。太陽がとっぷりと山の向こうに沈んだ後、名残惜しげに西の空が紅に輝きだす。熟れた柿のような色だなあ、といつも思うのだが、そのうち、その紅も薄くぼんやりした感じに変わっていく。気がつくと源氏山の上に宵の明星が輝きだし、人家から暖かな灯が漏れる。気がつくと夜になっている。
 ちょうど、宇宙物理学者・佐治晴夫博士の「からだは星からできている」で、太陽系の惑星探査を終えて、永遠の旅に出たボイジャー号の話を読んでいた。ボイジャーには、もしかしたら遠い将来、地球外生命に遭遇するかもしれない、そのときに彼らに地球の我々の存在を知らせるメッセージが積まれていて、その中のひとつがバッハのプレリュード、といった壮大な話に感動して、本を閉じたところだった。
 星の話に感動したのは何年振りか。

 たまにはこんな夕暮れもいいものだ。