チェルノブイリにて

チェルノブイリ原発原発労働者のまちだったプリピャチを訪問した。

いろいろと考えさせられた。

住民全員が避難して、廃墟になってしまったプリピャチ市。

原発事故の4日後にオープン予定だった観覧車が、一回も営業運転しないまま、朽ちていた。

ここだけが時が止まっている。

空だけが蒼い。

原発近くの放射能汚染地帯の村の病院を訪ね、夜7時ごろ病院を出た。

まだ夜の帳がおりたばかりなのに、もう漆黒の闇。

空を仰ぐと、降るような星空。

原発事故のせいで、この周辺は産業活動が止まってしまっているからだろうか。

あれは、ミルキーウェイだ。まるで雲がかかっているようだが、なるほど、これは確かに宇宙の中の川だ。

そして、その中にあるのが、W型のカシオペア座。天の川の川床にばらまかれたあまたの星屑の中に埋もれてしまっている、こんなカシオペアを見たのは初めてだ。

ゆるいメガネなので0.6しか見えないはずの私の視力なのに、こんなに素晴らしいとは。

ひとつ、星が流れた。

思わず歓声を上げる。

科学技術の粋を集めたはずの原発の事故。

それで銀河がこんなに美しく見えるとは、何と皮肉なことなのか。

写真
左上 立ち入り禁止区域を示す標識
右上 プリピャチ市 廃墟のホテル
左下 放棄された観覧車
右下 殉職した消防士の慰霊碑「世界を救った人々に捧ぐ」との碑文が刻まれている