9月21日〜9月28日 忙中暇あり〜心に残る読書「僕の死に方」「海辺の生と死」

敬老の日の三連休で鎌倉に戻った折、家人が図書館から借りてきた本の中に、金子哲雄「僕の死に方」があり、一気に読んでしまった。

疾風のように駆け抜けた41年の氏の人生と、余りにも早い「終活」の様子が綴られている。

まだ40歳前後なのに、余命宣告されてしまう運命の残酷さ。
しかし、それにめげず、死の前日まで仕事をする意地と気迫。

すごいと思う。さて、自分ならどうか、と思う。

私も多分、取り乱したりしないと思う。ただ、氏のように無駄なく余命を全うできる自信はない。

本人の記述だけでなく、夫人によるあとがきも圧巻である。息を引き取る直前、この世とあの世の境目が移ろいながら行き来する様子が描かれていて、思わず居住まいを正して読ませるような気迫がこもっている。

亡くなってからも、氏の存在を身近に感じるという夫人の淡々とした筆の運びを読むと、夫人のやすらかな心のうちが見てとれて不思議な気分になる。

そう思うと、私はやはり誰かを必要とするだろう、と思うのだ。孤独死というのはあまりにも寂しい。

この本を読了して一週間後、札幌に出張してきた仕事の仲間は、何と金子氏の友人だった。

ススキノでビールのコップを傾けながらこの事実を知ったとき、背中がゾクゾクした。

世の中狭いと言うか。



さて、「海辺の生と死」は島尾ミホの作。「死の棘」のモデルとなった島尾敏雄の奥さんである。

彼女の幼少の頃の奄美群島、加計呂間島での暮らしがおとぎ話のような筆致で綴られている。

彼女の家で、一晩泊まっていった、旅芸人一家とのやりとり。

ここに描かれている人たちは全てもうこの世にいない。

優しかった父、母、まわりの島民たち、そしてこのような幼い日々の思い出を語っている筆者自身、
もはや泉下の人だ。

この本を読んでいると、何とも懐かしい、夢をみているような気分になるが、これは全て過去の物語。

このような時代はもう戻って来ないのだろうか。